「ガットを変えただけで、こんなに打感が違うのか」——テニスを続けていると、一度はこの驚きを実感する瞬間があります。ラケット本体を買い替えるよりずっと安く、しかも数千円・数十分の作業で試せるのに、体感できる変化が大きいのがガット交換です。そのガット選びで最初にぶつかる壁が「マルチフィラメントとポリエステル、結局どちらがいいのか」という疑問ではないでしょうか。ショップのスタッフに相談しても「好みですね」で終わってしまったり、ネットで検索しても「ポリは硬い」「マルチは柔らかい」という単語の羅列だけで、自分のプレースタイルや悩みに当てはめて考えられなかったりすることも多いはずです。この記事では、2つの素材がなぜ打球感や性能に差を生むのかという構造の部分から説明し、そのうえで「どんな人がどちらを選ぶと後悔しにくいか」を整理しました。最後には、実際に候補になりやすい4種類のガットも紹介しています。
この記事でわかること
- ガット選びで「なんとなく」を続けると起こること
- そもそも「ガットの素材」で何が変わるのか
- マルチフィラメントの特徴 — 柔らかさと飛びを重視する人向け
- ポリエステルの特徴 — コントロールとスピンを重視する人向け
- 5つの軸で比べる — 打球感・コントロール・スピン・耐久性・体への負担
- どちらを選ぶべきか — 4つのチェックで判断する
最終更新:
マルチフィラメント・ポリエステルの代表的なガット4選
ここからは実際の候補です。マルチフィラメントとポリエステル、それぞれの代表的な製品を2種類ずつ、大手メーカーの商品ページで実際に案内されている特徴をもとに紹介します。価格は記事作成時点の参考価格で、セール状況によって変動する場合があります。購入前に商品ページで最新の価格・ゲージ・カラー展開を確認してください。
マルチフィラメントの2本は、価格帯こそ近いものの方向性がわずかに異なります。エクセルはとにかく柔らかさと耐久性のバランスを重視したコスパの良いモデル、X-ONE BIPHASEはナチュラルガットに近い打感を目指した、もう一段階上の打感を求める人向けのモデルという位置づけです。
ポリエステルの2本については、ポリツアープロが「柔らかめの打球感でヒジに優しい」と明記されている点が特徴で、ポリエステル初挑戦の人や、ポリの硬さが不安な人に選ばれやすい設計です。一方のアルパワーは、ツアープレーヤーの使用実績が豊富な定番モデルで、コントロールやスピン性能を最優先したい人に向いています。
どちらの系統を選ぶ場合も、購入時にはゲージ(太さ)の選択を忘れないようにしてください。数字が小さいほど細くスピンはかけやすいが耐久性は落ちる傾向があり、数字が大きいほど太く耐久性は高いが操作性はやや落ちるとされています。今回紹介した4本はいずれも複数のゲージから選べるため、初めての場合は中間的な太さから試すのが無難です。
なお、今回紹介した4本はいずれも国内の主要な通販サイトで継続的に取り扱われている定番モデルです。特別な入手ルートを探す必要はなく、ラケットショップの店頭でも同等品を見かけることが多いため、実物のパッケージやカラーを確認してから購入したい人は、まず近隣の店舗で扱いがないか探してみるのもよいでしょう。
ガットは消耗品のため、気に入った製品が見つかったら、同じものをまとめて用意しておくのも一つの方法です。練習中に急に切れてしまい、次の練習や試合に間に合わないという事態を避けやすくなります。特に大会前の時期は、直前になって同じガットの在庫が切れているということもあるため、早めの準備を心がけておくと安心です。
■ スペック比較表
| 商品 | バボラ(Babolat) Xcel エクセル 硬式テニス… | テクニファイバー(Tecnifibre) X-ONE B… | ヨネックス(YONEX) ポリツアープロ 硬式テニスガッ… | ルキシロン(Luxilon) アルパワー(ALU POW… |
|---|---|---|---|---|
| 参考価格 | 1,680円(12mカット・単張、税込参考価格) | 2,750円(メーカー希望小売価格4,730円) | 1,570円(国内定価2,310円) | 1,670円(国内定価2,940円) |
| ゲージ | 1.25mm/1.30mm | 1.24mm | 1.15mm/1.20mm/1.25mm/1.30mm | 1.10mm/1.15mm/1.20mm/1.25mm/1.30mm |
| カラー | ナチュラル/ブルー/ブラック/レッド | ナチュラル/ブラック/レッド | イエロー/グラファイト/ブルー | シルバー |
| レングス | 12m(単張カット) | — | — | — |
| 素材 | マルチフィラメント(ポリウレタン使用) | — | ポリエステル | ポリエステル |
| 素材・構造 | — | ナイロン(ELASTYL)+ポリウレタン、特殊ファイバー・マルチフィラメント・バイフェイズ処理 | — | — |
| 原産国 | — | フランス | — | — |
| 製法 | — | — | サーモプレストレッチ製法 | — |
※ 表は横にスクロールできます。仕様は販売ページの記載にもとづく目安です。
※ 価格・在庫は変動します。最新情報は各ストアでご確認ください。当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。
ガット選びで「なんとなく」を続けると起こること
硬式テニスのガットは、大きく分けてナイロン系のマルチフィラメント、合成樹脂のポリエステル、そして動物の腸を加工した天然ガットの3系統があります。このうち市販ラケットに標準で張られていることが多く、多くのプレーヤーが実際に選ぶことになるのがマルチフィラメントとポリエステルの2つです。名前だけ見ると単なる素材の違いのように思えますが、実際には打球感、ボールの飛び方、スピンのかかり方、そして体への負担まで、プレー全体に関わる要素が変わってきます。
たとえば、まわりが使っているからという理由だけでポリエステルに張り替えて、数週間後に肘や手首に違和感を覚えるようになったという話は、テニスを続けている人なら一度は聞いたことがあるかもしれません。逆に、コントロール重視のプレーヤーが柔らかい打感のマルチフィラメントを使い続けて、「思ったところに打球が飛ばない」ともどかしさを感じているケースもあります。どちらも、ガットの特性を理解しないまま「なんとなく」で選んでしまった結果として起こりやすいミスマッチです。
この記事では「このガットに変えれば絶対に上達する」というような断定はしません。ガットとの相性には、プレースタイル、スイングスピード、そして体の状態まで個人差が大きく関わるためです。その代わり、素材ごとの構造的な違いを丁寧に解説し、自分の状況に当てはめて判断できるだけの材料を提供することを目指します。
実際、「なんとなく」で選んだガットが体に合わず、練習のたびに違和感を我慢しながらプレーを続けているうちに、テニス自体を楽しめなくなってしまうケースも少なくありません。逆に言えば、素材ごとの特性を理解して自分に合ったものを選ぶだけで、日々の練習や試合での快適さは大きく変わります。これは特別な知識というより、ガットという道具の「取扱説明書」を一度読んでおくようなものだと考えてください。
また、フィジカル面だけでなく、メンタル面への影響も見逃せません。ボールが安定して入るようになると、ショットへの自信が生まれ、思い切ったスイングができるようになります。逆に「このガットだと感覚がつかめない」という状態が続くと、無意識にスイングが小さくなり、結果的にパフォーマンス全体が落ちてしまうこともあります。ガット選びは、単なるスペック比較にとどまらず、テニスを楽しみ続けるための土台づくりでもあると考えてください。
この記事のスタンス
ガットの効果については「〜とされる」「〜しやすい傾向がある」という表現にとどめています。同じ素材・同じゲージのガットでも、張り上げるテンションやラケット本体との組み合わせによって体感は変わるため、断定できるものではないからです。判断材料として使ったうえで、可能であれば実際に試し張りしてみることをおすすめします。
そもそも「ガットの素材」で何が変わるのか
ガットの役割は、ラケットのフレームとボールの間でエネルギーをやり取りするクッションのようなものです。素材が変わるとこのクッションの「硬さ」と「動きやすさ」が変わり、結果としてボールが当たった瞬間の感触、ボールの飛び方、スピンのかかりやすさ、そして衝撃が手や腕にどれだけ伝わるかが変わってきます。
マルチフィラメントは、細いナイロン繊維を数百本単位で束ねて1本のガットにした構造をしています。太めの糸を何本も撚り合わせたロープのようなイメージで、繊維同士が動くことでボールが当たった瞬間の衝撃を吸収しやすいとされています。柔らかい打球感と、ボールを包み込むような感覚が特徴です。
一方のポリエステルは、樹脂を一本の細い線として成形したモノフィラメント構造です。繊維が束ねられていない分、ガット自体が硬く、伸び縮みしにくい性質を持っています。この「硬くて伸びにくい」という特性が、ボールを掴んでから弾き出すまでの動きを速くし、スピンをかけやすい、狙った場所に打球をコントロールしやすいという評価につながっているとされています。
この構造の違いさえ理解しておけば、「なぜマルチは柔らかいのか」「なぜポリは硬くてコントロールしやすいと言われるのか」という理由が、単なる暗記ではなく納得感を持って頭に入ってきます。次の章から、それぞれの特徴をもう少し詳しく見ていきます。
なお、ガットの太さ(ゲージ)や張り上げるテンション(強さ)によっても打球感は変化しますが、これらは素材とは別軸の要素です。まずは素材という大きな枠組みで自分の方向性を決め、そのうえでゲージやテンションを微調整していくと、選択肢の多さに迷わずに済みます。ゲージとテンションの考え方については、記事の後半で改めて詳しく説明します。
ポリエステルは、2000年代以降にプロツアーで急速に普及した素材です。大きなスイングでも強烈なスピンとコントロールを両立できる特性が注目され、トップ選手の間で標準的な選択肢になったことをきっかけに、一般のプレーヤーにも広く知られるようになりました。一方でマルチフィラメントは、それ以前から続く「打ちやすさ」を重視した素材として、初心者から愛好家まで幅広く使われ続けています。どちらが優れているというより、テニスというスポーツの中で異なる役割を担いながら発展してきた素材だと捉えると理解しやすくなります。
こうした背景を知っておくと、「上級者はみんなポリエステルを使っているから自分も」という短絡的な判断を避けやすくなります。プロが使う理由と、自分がガットに求めているものが同じとは限らないという視点を持っておくことが、遠回りに見えて実は一番の近道です。
マルチフィラメントの特徴 — 柔らかさと飛びを重視する人向け
マルチフィラメントは、初めてラケットを購入したときに標準で張られていることが多い素材です。実際に手に取ってみると、ポリエステルよりやや太めに感じられ、指で軽くつまむとわずかに沈み込むような柔らかさがあります。この柔らかさこそが、以下のメリット・デメリットすべての土台になっています。ここでは、その特徴を「メリットになりやすい点」と「注意しておきたい点」に分けて整理します。
特に社会人になってから久しぶりにテニスを再開した人や、テニス肘の既往がある人にとっては、この「柔らかさ」がプレーを続けられるかどうかを左右する重要な要素になることもあります。無理に硬いガットに挑戦する前に、まずはマルチフィラメントで様子を見るという選択も十分に合理的です。週末に友人とレジャー感覚でテニスを楽しむ人や、勝敗よりもラリーを続けること自体を楽しみたい人にとっても、マルチフィラメントの飛びやすさと柔らかさは扱いやすい特性だと言えます。
また、マルチフィラメントは反発力が高いとされているため、同じテンションであればポリエステルよりも球が飛びやすく感じられる傾向があります。パワー不足を感じている人や、力強く振り切れないタイミングでもボールを前に運びたい人にとっては、この特性がプラスに働くことがあります。
こうした特性から、マルチフィラメントは「まずは楽しくラリーを続けたい」「大きな怪我なく長く続けたい」という人に向いている素材だと言えます。逆に、力強いスピンをかけて狙った場所に打ち込みたいという明確な目的がある場合は、次に紹介するポリエステルのほうが相性が良い可能性があります。
■ 打球感が柔らかい
繊維が束ねられた構造により、ボールが当たった瞬間の衝撃が分散されやすく、包み込まれるような柔らかい打球感になりやすいとされています。特に硬式テニスを始めたばかりで、まだ強い打球に慣れていない人には、この柔らかさが安心材料になることがあります。
■ 腕や肘への負担が比較的軽いとされる
ポリエステルに比べて衝撃吸収性が高いとされており、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の予防・対策としてマルチフィラメントへの張り替えが勧められることがあります。ただしこれはガットだけの効果ではなく、フォームやラケット本体の特性も関わるため、過信は禁物です。
■ ボールが飛びやすい
繊維がしなってボールを押し出す反発力が出やすいとされ、スイングスピードがまだ十分でない人でも、ある程度ボールを飛ばしやすいと言われています。
■ テンションが落ちやすい・耐久性はやや劣る
繊維の束という構造上、使用しているうちに繊維同士の擦れで摩耗が進み、ポリエステルに比べてテンション(張りの強さ)が落ちやすい、切れやすいとされています。頻繁に練習する人ほど、張り替えの周期は短くなる傾向があります。
ポリエステルの特徴 — コントロールとスピンを重視する人向け
ポリエステルは、もともと大きなスイングでスピン量の多いショットを打つ上級者・プロ選手の間で普及した素材です。手に取ると、マルチフィラメントよりも硬く、指で押してもほとんど沈まないことに気づくはずです。この硬さが、次に紹介するメリット・デメリットすべての土台になっています。ここでも「メリットになりやすい点」と「注意しておきたい点」に分けて見ていきます。
特に草トーナメントや部活動の試合など、勝敗を意識する場面が増えてきたプレーヤーほど、ポリエステルの恩恵を感じやすいとされています。ただし、体格や筋力が発展途上のジュニア選手や、まだ基本的なフォームが固まっていない人には、必ずしも最適とは限らない点も覚えておいてください。また、ポリエステルは反発力が低いとされているため、同じテンションで張ってもマルチフィラメントより球が飛びにくく感じることがあります。これを踏まえて、初めてポリエステルに挑戦する際は、これまでよりやや緩めのテンションで張ってもらうと、急激な変化に戸惑いにくくなります。
こうした特性から、ポリエステルは「試合でしっかり結果を出したい」「大きなスイングでスピンをかけたショットを安定して打ちたい」という中〜上級者に向いている素材だと言えます。ただし、扱いには一定のスイングスピードとフォームの安定が前提になる場合が多く、始めたばかりの段階でいきなり選ぶと、むしろボールが飛ばず窮屈に感じることもあります。
■ スピンがかけやすいとされる
ガット表面の摩擦係数や、打球時にガットが横方向にずれてから元に戻る「スナップバック」という現象が、ポリエステルではナイロン系より起こりやすいとされています。これが強いスピンを生み出す一因と言われています。
■ コントロール性能が高いとされる
硬くて伸びにくい構造のため、ボールを捉えてから飛び出すまでの時間が短く、狙った場所に打ち出しやすいという評価が定着しています。強いスイングをする中〜上級者に選ばれやすい理由のひとつです。
■ 耐久性・テンション維持力が高い
マルチフィラメントに比べてへたりにくく、同じ強さでスイングしても切れにくいとされています。頻繁にガットが切れて困っている人にとっては、この耐久性の高さがメリットになります。
■ 打球感は硬め・衝撃が伝わりやすいとされる
繊維がしならない分、衝撃を吸収しにくく、打球感は硬めになりやすいとされています。ラケット本体がもともと硬めの設計だったり、スイングスピードがまだ十分でなかったりすると、肘や手首に負担を感じやすいとも言われています。
5つの軸で比べる — 打球感・コントロール・スピン・耐久性・体への負担
ここまでの内容を、実際にガットを選ぶときに比較しやすいよう5つの軸に整理しました。すべて「どちらの傾向が強いとされているか」という相対的な比較であり、絶対的な優劣ではない点に注意してください。
打球感については、マルチフィラメントのほうが柔らかく、ボールを包み込むような感覚になりやすいとされています。ポリエステルは硬めで、ダイレクトに近い感覚を好む人に向いているとされます。コントロール性能では、ポリエステルのほうが狙った場所に打ち出しやすいという評価が多く、逆にマルチフィラメントは飛びやすい分、力加減の調整に慣れが必要になることがあります。
スピン性能についても、一般的にはポリエステルのほうがスピンをかけやすいとされていますが、これはスイングスピードがある程度速い人でより顕著に体感されやすい傾向で、スイングが緩やかな初心者〜中級者では、素材による差よりもスイング自体の影響のほうが大きい場合もあります。耐久性は、ポリエステルのほうが摩耗・伸びに強く、頻繁に練習する人ほど恩恵を感じやすいとされています。
最後に体への負担です。マルチフィラメントは衝撃吸収性が高いとされ、肘や手首に不安がある人に選ばれやすい傾向があります。ポリエステルは硬めの打球感になりやすく、フォームやラケット本体との組み合わせによっては負担が大きくなることもあるとされています。ただしこれは個人差が大きく、ポリエステルを使っていても違和感がない人も多くいます。断定はできませんが、傾向として押さえておくと選びやすくなります。
なお、ここで挙げた5つの軸はあくまで「傾向」であり、同じポリエステルでも比較的柔らかめに作られた製品もあれば、同じマルチフィラメントでもややしっかりした打球感の製品もあります。素材名だけで即断せず、商品ページに書かれている特徴の説明もあわせて確認することをおすすめします。
また、ガットの特性は単体で決まるものではなく、組み合わせるラケット本体のフレーム厚や重量によっても体感が変わります。もともとフレームが厚く反発力の高いラケットにポリエステルを合わせると、硬さがより強調されて感じられることがあり、逆に薄めのフレームであれば、ポリエステルでもマイルドな打球感に感じられることがあります。ガットだけでなく、ラケット本体との相性もあわせて考えると、より納得のいく選択につながります。
こうした複合的な要因があるため、店頭やネットのレビューだけを鵜呑みにせず、あくまで「傾向」として参考にしたうえで、可能であれば自分のラケットで実際に試してみることが、後悔しないガット選びへの一番の近道になります。
どちらを選ぶべきか — 4つのチェックで判断する
ここまでの内容を踏まえて、実際にどちらの素材を選ぶべきかを判断する手順を整理しました。順番にチェックしていくと、自分に合う可能性が高いほうが見えてきます。
この4つのチェックは、上から順に優先度をつけています。特に1つ目の「体の違和感」は、他のどの要素よりも優先して確認してほしいポイントです。パフォーマンスの向上よりも、まずは怪我なく長くテニスを続けられることを優先してください。
一方で、2つ目以降のチェックは、プレーの質を高めるための判断材料です。すべてを完璧に満たす必要はなく、自分にとって特に重要な要素が何かを意識しながら、優先順位をつけて選んでいくとよいでしょう。迷ったときは、次の章で紹介する中間的な選択肢も参考にしてください。
なお、店舗によっては、購入前に短いカットガットで試し打ちができるサービスを提供している場合があります。無料または数百円程度で利用できることが多いため、近くのテニスショップやスクールにそうしたサービスがないか、一度確認してみるのもおすすめです。実際に数球打ってみるだけでも、スペック表だけでは分からない打球感の違いを体感できます。
- 1今使っているガットで肘・手首・肩に違和感があるかを確認する。違和感がある場合は、素材をポリエステルからマルチフィラメントに変える、あるいは現在マルチフィラメントを使っているなら張り替えテンションを見直すことを優先してください。体の違和感を我慢して使い続けるのはおすすめできません。
- 2自分のスイングスピードとプレースタイルを振り返る。しっかり振り切るスイングでスピンやコントロールを重視するなら、ポリエステルの恩恵を感じやすいとされています。逆に、まだスイングが安定していない、当てることを優先したい段階であれば、マルチフィラメントのほうが扱いやすいことが多いです。
- 3ガットが切れる頻度・練習量を考える。週に数回以上しっかり練習する人で、ガットが数週間で切れてしまうという場合は、耐久性の高いポリエステルへの変更でコストを抑えられる可能性があります。逆に月数回程度の頻度であれば、マルチフィラメントの耐久性でも十分なことが多いです。
- 4それでも迷う場合は、ハイブリッド張り(メインとクロスで異なる素材を組み合わせる張り方)や、まずは柔らかめのポリエステルを試すという中間の選択肢も検討してください。次の章で詳しく説明します。
痛みがある場合は無理をしない
肘や手首に強い痛みがすでに出ている場合、ガットの変更だけで根本的に解決するとは限りません。ガットはあくまで補助的な要素で、フォームやラケット本体、そして体の状態そのものが原因になっていることもあります。痛みが続く場合は、ガット選びと並行して、整形外科やスポーツドクターへの相談も検討してください。
中間の選択肢 — ハイブリッド張りという考え方
マルチフィラメントとポリエステル、どちらか一方に決めきれない場合に検討したいのが「ハイブリッド張り」です。これはメイン(縦糸)とクロス(横糸)に異なる種類のガットを組み合わせて張る方法で、双方の良さを部分的に取り入れようとする考え方です。
代表的な組み合わせは、メインにポリエステル、クロスにマルチフィラメントを使うパターンです。打球の中心を担うメインにポリエステルを使うことでコントロール・スピン性能をある程度確保しつつ、クロスに柔らかいマルチフィラメントを組み合わせることで、全体としての打球感の硬さをやわらげる狙いがあるとされています。逆の組み合わせ(メインにマルチ、クロスにポリ)を試すプレーヤーもおり、どちらが正解ということはありません。
ただし、ハイブリッド張りはガットを2種類購入する必要があり、張り替えを依頼するショップによっては対応可否や工賃が変わることもあります。まずは同じ系統のガットを単体で試してみて、それでも打球感やコントロールに納得がいかない場合の次の一手として検討するのがおすすめです。
思い切って両方の性質を持たせようとするのではなく、まずは「柔らかめのポリエステル」を試すという方法もあります。近年はポリエステルの中でも、繊維の配合や製法によって従来より柔らかい打球感を目指した製品が増えています。次の章で紹介する4種類の中にも、そうした特徴を持つモデルが含まれています。
実際にハイブリッド張りを試したプレーヤーの声としては、「メインをポリエステルにしただけでコントロール性能が上がったと感じた」「クロスにマルチフィラメントを入れたことで、以前ほど手首に疲労感が残らなくなった」といった感想が聞かれます。ただし効果の感じ方には個人差が大きく、必ず同じ結果が得られるわけではない点には注意してください。
費用面では、ハイブリッド張りは同じ長さのガットを2種類用意する必要があるため、単一素材で張るよりもややコストがかかることがあります。とはいえ、1本分をまるごと買い替えるよりも、余ったガットを別のラケットや次回の張り替えに使い回せる場合もあり、必ずしも大幅な負担増になるとは限りません。ショップによっては工賃が単一素材の張り替えと変わらないこともあるため、依頼する前に確認しておくと安心です。
張り替えの目安とテンションの考え方
ガットは張ったら終わりではなく、使っているうちに劣化していく消耗品です。素材ごとの張り替え目安と、テンション(張りの強さ)の考え方も押さえておきましょう。
マルチフィラメントは、繊維の摩耗によってテンションが落ちやすく、週1〜2回程度の練習であれば2〜3か月程度を目安に張り替えを検討する人が多いとされています。見た目に切れていなくても、打球感が緩く感じられたら劣化のサインです。ポリエステルは耐久性が高い一方で、切れる前にコシがなくなり本来の性能が発揮されなくなることがあるため、「切れるまで使う」のではなく、同じく数か月単位での定期的な張り替えが推奨されることが多いです。
テンションについては、緩めに張るとボールが食い込みやすく飛びやすい・当たりが柔らかく感じられ、きつめに張ると反発が抑えられコントロールしやすくなるとされています。一般的に、ポリエステルは同じテンションでもマルチフィラメントよりやや硬く感じられやすいため、ポリエステルに変更する際は、これまでより数ポンド緩めに張ってもらうと打球感の変化がゆるやかになりやすいとも言われています。ただし最適なテンションには個人差が大きいため、まずはショップの推奨テンションを基準にし、そこから徐々に微調整していくのが現実的です。
最後に、ガットの張り替えは自分で行うこともできますが、専用のストリングマシンが必要になるため、多くの人はテニスショップやスクール併設のショップに依頼することになります。工賃はおおむね1,000〜2,000円程度が目安で、ガット代と合わせて2,500〜5,000円程度が張り替え1回あたりの総額になることが多いです。ガットの種類を変える際は、この工賃も含めて予算を考えておくと安心です。
ガットの状態を自分でチェックする簡単な方法として、指でメインとクロスの交差部分を軽くこすってみるというやり方があります。新品時に比べてガット同士がスムーズに動かなくなっていたり、逆に緩んでガタつきを感じたりする場合は、劣化のサインである可能性があります。定期的にこうしたセルフチェックを行う習慣をつけておくと、次に張り替えるべきタイミングを見極めやすくなります。
保管環境もガットの寿命に影響すると言われています。高温多湿になりやすい夏場の車内や、直射日光が当たる場所にラケットを長時間置いておくと、素材の劣化が早まりやすいとされています。使用後はできるだけ専用のラケットケースに入れ、風通しの良い場所で保管する習慣をつけておくと、ガットの状態を長く保ちやすくなります。
ここまで、マルチフィラメントとポリエステルという2つの素材の違いを、構造から選び方、メンテナンスまで一通り見てきました。どちらか一方が絶対的に優れているということはなく、大切なのは自分の体の状態、プレースタイル、そして練習頻度に合わせて選ぶことです。まずは今回紹介した4本の中から気になる1本を試してみて、そこから自分に合う方向性を探っていくのがおすすめです。
よくある質問
Qマルチフィラメントとポリエステル、初心者にはどちらがおすすめですか?
A断定はできませんが、これからテニスを始める、あるいはまだスイングが安定していない段階では、柔らかい打球感で衝撃を吸収しやすいとされるマルチフィラメントのほうが扱いやすいと感じる人が多いようです。多くの入門用ラケットにも標準で張られていることが多く、まずはそこから試してみるのが無難です。
Qポリエステルに変えると本当に肘が痛くなりますか?
A必ず痛くなるわけではありません。ポリエステルは構造上、衝撃を吸収しにくく打球感が硬めになりやすいとされていますが、実際に痛みが出るかどうかはフォームやラケット本体、スイングスピードなど複数の要因が関わります。もともと腕や肘に不安がある人は、慎重に様子を見ながら使うか、柔らかめのポリエステルやハイブリッド張りから試すことをおすすめします。
Qマルチフィラメントとポリエステルの寿命はどのくらい違いますか?
A一般的にはポリエステルのほうが摩耗や伸びに強く、テンションが長持ちしやすいとされています。マルチフィラメントは繊維の擦れによって早めにへたりやすい傾向があり、週1〜2回程度の練習であれば2〜3か月ごと、ポリエステルであればそれより長い周期を目安に張り替えを検討する人が多いようです。使用頻度や強さによって個人差があります。
Qハイブリッド張りは自分で選んでも大丈夫ですか?
Aハイブリッド張りは組み合わせ次第で体感が大きく変わるため、初めての場合は自己判断で決めるより、ショップのスタッフに相談しながら選ぶことをおすすめします。まずは同じ系統のガットを単体で試してから、必要に応じてハイブリッドを検討する順番のほうが、原因の切り分けもしやすくなります。
Qゲージ(太さ)はどう選べばいいですか?
A数字が小さいほど細くスピンをかけやすい一方、耐久性は下がる傾向があり、数字が大きいほど太く耐久性は高いものの操作性はやや落ちるとされています。今回紹介した4本はいずれも複数のゲージから選べるため、初めては中間的な太さから試し、切れやすさや打球感に応じて次回調整するのが現実的です。
Qガットの色(カラー)に性能の違いはありますか?
A同じ製品であれば、カラーによる性能差は基本的にないとされています。カラー展開はデザイン・視認性の好みで選ぶもので、ラケットとの色の組み合わせを楽しみたい場合や、ボールとの見分けをつけやすくしたい場合に選択肢として活用してください。
Qガットの張り替えはどのくらいの頻度で行うべきですか?
A目安として、週1〜2回程度練習する人であれば2〜3か月に一度、月に数回程度であれば半年に一度程度を検討する人が多いようです。ただし、見た目に切れていなくてもテンションが落ちて打球感が緩くなっていることがあるため、期間だけでなく実際の打球感の変化も判断材料にしてください。
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